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東京地方裁判所 昭和32年(ワ)5064号 判決 1959年10月02日

原告 小林秀三郎

被告 小林せん 外一名

主文

一、原告は被告会社の清算人であること、ならびに被告小林せんは被告会社の無限責任社員及び清算人でないことを確認する。

一、原告のその他の請求は棄却する。

一、訴訟費用は被告等の負担とする。

事実

第一原告の請求

一、原告は被告会社の清算人であること、ならびに被告小林せんは被告会社の無限責任社員及び清算人でないことを確認する。

一、被告会社は原告に対し昭和二六年六月二九日東京法務局日本橋出張所がなした「代表社員小林秀三郎は昭和一五年一月一日退任す、昭和二六年六月二五日小林せん代表社員に就任する。」及び「社員小林せんは昭和二六年六月二五日その責任を無限と変更す」との各変更登記の抹消登記手続をせよ。

一、訴訟費用は被告等の負担とする。

第二原告の請求原因

一、被告会社は大正一二年三月二三日設立せられ、昭和二八年三月二二日存立時期の満了によつて解散した。

二、原告は被告会社の設立とともに、唯一人の無限責任社員となり、従つて代表社員であつた。爾来その地位を保有し、被告会社の解散によつてその清算人となり現在にいたつている。

三、被告小林せんは被告会社の有限責任社員であつて、いまだ一度も無限責任社員及び代表社員となつた事実はない。

四、然るに、被告会社の登記簿によれば、昭和二六年六月二九日付で被告小林せんは昭和二六年六月二五日その責任を無限に変更し、代表社員原告小林秀三郎は昭和一五年一月一日退任し、及び昭和二六年六月二五日被告小林せんは代表社員に就任した旨の変更登記がなされている。

五、右変更登記は真実に反するので、原告は被告等に対し原告が被告会社の清算人であること、ならびに被告小林せんが被告会社の無限責任社員及び清算人でないことの確認を求めるとともに、被告会社に対し前記変更登記の抹消手続を求めるため本訴請求に及んだ。

第三被告小林せんの申立及び答弁

一、原告の請求を棄却するとの判決を求めた。

二、原告の請求原因に対し、被告会社の変更登記及び解散の事実は認める。変更登記が虚偽であることは否認する。変更登記どおりの事実は存在する。故に原告の請求は失当である。

第四被告会社の申立及び答弁

原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として原告の請求原因事実を総べて認めた。

第五当事者の立証

一、原告は、甲第一号証ないし第五号証及び第六号証の一ないし三を提出し、甲第六号証の三は被告小林せんが原告その他の者の同意を得ることなく、これらの者の名義を冒用して作成したものであると附陳し、証人河田武蔵の証言及び原告本人尋問の結果を援用し、乙号証の成立を総べて認めた。

二、被告小林せんは、乙第一号証ないし第四号証を提出し、被告本人小林せんの訊問の結果を援用し、甲第六号証の三は被告小林せんが他の名義人の同意を得て作成したもので真正に成立したものであると述べ、その他の各甲号証の成立を認めた。

理由

一、被告会社が大正一二年三月二三日設立せられ、原告が唯一人の無限責任社員となり、従つて代表社員となつたことは、被告会社の認めるところであり、被告小林せんの明らかに争わないところである。又被告会社が昭和二八年三月二二日存立時期の満了によつて解散したことは、当事者間に争がない。

二、原告が爾来被告会社の無限責任社員及び代表社員の地位を保有し、被告会社の解散とともに当然清算人となつたこと及び被告小林せんが無限責任社員及び代表社員、従つて清算人になつた事実がないことは、原告及び被告会社の間では争いはないが、被告小林せんは、原告が昭和一五年一月一日代表社員を退任し、同被告が昭和二六年六月二五日有限責任社員より無限責任社員になり、代表社員に就任した旨主張し、争うから、この点について判断する。

まず、甲第六号証の一及び二によれば、原告は商法中改正法律施行に基き資格喪失により昭和一五年一月一日代表社員を退任した旨の記載があるが、右法律によりかゝることが生ずる理のないことは明らかである。

次に甲第六号証の三によれば、被告小林せんの社員の責任を無限に変更すること、及び原告は代表社員を退任し、同被告を代表社員に選任することについて、原告及び右被告外二名の社員が同意し、右四名の記名捺印があるが、証人河田武蔵の証言、原告本人及び被告本人小林せんの各訊問の結果を綜合すれば、右被告を除く他三名の記名捺印は真正に成立したものと認められない。又原告が被告小林せんに代表社員の地位を譲る旨の被告本人小林せんの訊問の結果は直ちに信用することはできない。他に被告小林せんの前記主張を認めるに足りる証拠はない。

三、以上の認定により、原告は被告会社の解散にいたるまでその代表社員であること及び被告せんはその無限責任社員及び代表社員になつたことはないこと明らかであるから、被告会社が解散するとともに、他に清算人の選任がある旨の主張立証がない限り、原告が当然被告会社の清算人になつたこと及び被告小林せんは清算人でないことを認めることができる。従つて、原告の原告が被告会社の清算人であること及び被告小林せんが被告会社の無限責任社員及び清算人でないことの確認を求める請求は正当であるから、これを認容する。

四、最後に、原告の抹消登記手続の請求について判断する。原告主張のとおり各変更登記がなされたことは当事者間に争がない。

然し、右変更登記は、前記認定事実に反するものであるから、この登記は事実に反するものとして許すべからざるものであつて、抹消されなければならない。そうして、原告は前記認定のとおり被告会社の清算人であるから、非訟事件手続法第一四八条の二の規定によつて前記変更登記の抹消を申請することができる。従つて、原告は裁判所に対し抹消登記手続の請求をするまでもなく、自ら前記変更登記の抹消を申請すればよいのであるから、原告の本訴抹消登記手続の請求はその利益がない。従つて、原告の抹消登記手続の請求は失当であるから、棄却を免れない。

五、以上の理由により原告の本訴確認の請求はこれを認容し、その他の請求はこれを棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 長谷部茂吉 池田正亮 上野宏)

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